中井貴惠さんの東京オリンピック

日本経済新聞7月9日付夕刊エッセイ「あすへの話題」で、俳優の中井貴惠さんが『わたしの東京オリンピック』を書いていた。
貴惠さんは最初に「1964年8月に私は父・佐田啓二を交通事故で失った」と書いている。中井貴惠さん・中井貴一さん姉弟の父親は佐田啓二さん。日本映画全盛時代、松竹を代表する二枚目俳優。代表作は「君の名は」「あなた買います」「喜びも悲しみも幾年月」「秋刀魚の味」など。貴恵さんが書くように、長野県蓼科の山の家から仕事場へ向かう途中の事故だった。楽しみにしていた東京オリンピック開催を前に亡くなった。当時6歳の貴惠さん、貴一さんは3歳にもならなかった。おかあさんに誘われ、田園調布からバスに乗って、バレーボール会場の駒沢公園まで出かけたのは、佐田さんが亡くなって2カ月後のことだった。
貴惠さんはエッセイの終わりに「日の丸を背負って戦う選手を夢中で応援した。あのときの特別な感動は2カ月前に突然父を亡くし、失意の淵にいた6歳の私の心に一筋の明るい光を与えてくれた。これが私の心に刻まれた東京オリンピックだ」と書き、まもなく開幕する五輪へ「国民おきざり、強行突破、そんな形で心に刻まれることは誰も望んでいないはずだ」と結んでいる。同感です。

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