コラム|衰えぬ雷蔵人気

ある古書店の店主が言う。『雷蔵に関係した本なら、どれもよく売れますよ。だから何でも買い入れます』と。
大映京都撮影所で市川雷蔵が活発に映画出演したのは1954年から69年の15年間で、映画デビューは「花の白虎隊」(監督田坂勝彦。共演勝新太郎、黒川弥太郎)だったが、亡くなったのは69年である。
この時期、日本映画界はプログラムピクチャーと呼ばれる娯楽作品を大量に生産していた。毎週2本立て興行年間52週として毎年約130本の映画を日本映画各社が競って作っていた。市川雷蔵という稀有の時代劇スターの人気は、45年経った今に至るも衰えをみせない。特に、シニアといわれる婦人層に愛されているのはなぜだろうか。
作家の多田容子さんは『雷蔵は、例えば苦悩や葛藤をどう演じたか。私は頭と腹のずれた意識を拮抗させ、胸中は戸惑い足元は揺らぎ、それらを合成したもののほんの一部を面上ににじませる。こうした異質な演技の体内での同時実行、その総合的な表れこそが、単純な喜怒哀楽を越えた「不思議な魅力」を生むのだと考える』と解説している。

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