女優でエッセイストの岸惠子さんが、日本経済新聞の人気企画「私の履歴書」に登場。5月1日からはじまり、早くも話題になっている。8日付の第7回は『大船撮影所』で、見出しは「映画の不思議に魅せられて」。
この回の後半は、岸さんの見た大船撮影所案内記となっている。大きなステージの真ん中にしゃれた洋館が建てられ、きれいな女性が男性と向き合っていた。「李香蘭」(山口淑子=のちに参院議員)と高村潔所長が教えてくれたという。岸さんは「私は2人の前にデンと座っている大きな物体に圧倒された。分厚い布団を着た怪しげな代物はミッチェルという撮影機で布団の割れ目から大きな『眼』が私の半生を虜(とりこ)にした『レンズ』という魔物だった」と思い出している。見出し通り人生を大きく変えた松竹大船撮影所だった。
筆者のリアルタイム岸惠子体験は、1972年の松竹映画「約束」。斎藤耕一監督得意のロードムービーで、愛の逃避行物語。岸さんと昨年亡くなったショーケンこと萩原健一さんが初共演。ショーケンは最初助監督志望で撮影現場におり、いつの間にか主演に。岸さんは女囚で仮出所中に逃亡中の男(萩原)と出会い、愛し合う。「宇宙戦艦ヤマト」の宮川泰音楽が情感豊かに盛り上げる佳作。松竹DVD俱楽部でブルーレイ・DVD発売中。
岸惠子連載「私の履歴書」②
