「わが刻(とき)はすべて演劇」

松竹㈱(迫本淳一社長)は、本年創業125周年を迎えた。現在、休館中の歌舞伎座1階ロビー正面に創業者、白井松次郎翁(右側)と大谷竹次郎翁(左側)の胸像が並んでいる。そのまま右側のエスカレーターを上がると2階に大きな時計台があり、竹次郎翁の銘文『わが刻(とき)はすべて演劇』がある。歌舞伎と演劇、映画に生涯をささげた竹次郎翁の言葉である。演劇とは映画も含めたエンターテイメント全体を指す。
「映画時報」15年6月号に、竹次郎翁の孫にあたる大谷信義会長のインタビューをさせていただいた。大谷会長は祖父について『歌舞伎座の監事室で、アポロの月面着陸(1969年7月20日)を見ていたそうです。「会長、人類が月に行きました」と声をかけたら、目に涙を浮かべたという話が伝わっています。1877年(明治10年)生まれで少年時代はまだ、チョンマゲ姿の人が町を歩いている時代の人ですからね』と答えていただいた。
さらに松竹は、歌舞伎・演劇興行から一歩踏み出し、1920年(大正9年)2月、松竹キネマ合名社を設立。同年に蒲田撮影所を開所し映画製作を開始。のちに大船撮影所を。小津安二郎、山田洋次両監督らを生む。本年は「松竹映画100周年」。すでに記念イベントは開始、上映会や記念展も開催されている。