コラム|岡本喜八監督

生涯39本の映画を作った故・岡本喜八監督。彼はその著「ただただ右往左往」(晶文社刊)のなかで、『無病息災というコトバがあるが、あれはどうもマユツバもので、むしろ一病息災といった方が理くつにかなっているのではないか。私の持病はちょっと指を折っただけでも五つ六つ数えられるから、かなり忙しいし、油断もスキもない。その割に、活動屋になってから40年近く、一日も休んだ覚えはないのだから、数病息災とでも言うのだろう』と書いている。岡本監督が亡くなって12年。11月3日には東宝映像事業部から初のブルーレイ化「日本のいちばん長い日」(67年、東宝創立35周年記念映画)がリリースされる。白黒シネスコ画面に岡本監督の熱気が感じられる。
最近は小津安二郎、木下恵介、黒澤明などの監督特集はみなアタマに監督名をつけて売る。それだけ知名度が高いからであるが、いま日本映画を支えている監督では、一般の観客はほとんどその監督名さえも知らず、ただテレビドラマの映画化で、テレビタレントの出演ということだけでスクリーンを見ているのである。演出家を含め、製作スタッフの全力を結集して一本の劇場用映画を完成することを考える人はあまりにもすくない。