大林宣彦監督が10日亡くなった。5年前、肺がんが見つかり、余命3か月の宣告を受ける。その間、「花筐/HANAGATAMI」と「海辺の映画館―キネマの玉手箱」(配給アスミック・エース)を監督した。亡くなった日が、奇しくも新型コロナウイルス発生がなければ、「海辺のー」の公開日だった。
43年間に監督した作品は44本。アマチュア映画作家時代を入れると、約25本増える。多作だっただけに、映画ファンには好きな映画がわかれるかもしれない。筆者は77年の東宝「HOUSE ハウス」に始まり「瞳の中の訪問者」、78年の山口百恵・三浦友和(モモトモ映画と呼んでいた!)主演「ふりむけば愛」から薬師丸ひろ子主演の角川「ねらわれた学園」(81)、原田知世主演「時をかける少女」(83)、そして、なんといっても松竹で配給された日本テレビ=ATG「転校生」。数え上げたらいくらでも出てくる。特に「ハウス」の当時でいえば奇抜な映像演出は驚くしかなく、「ふりむけば愛」のサンフランシスコのゴールデンブリッジをバックに、のちに結婚するふたりの場面が現実と重なり合ったりする映像魔術に酔った。テレビCMで腕を磨いた賜物だったのだろう。何より本篇に入る前に「A MOVIE」の“刻印”に手を叩いていて喜んだ若き映画ファンは多くいた。
大林宣彦監督の残したもの
