黒沢年雄新聞連載「この道」②

東宝専属だったベテラン俳優の黒沢年雄(当時は年男)が、東京新聞夕刊に『この道』を好評連載中。10日付は「成瀬巳喜男監督」。66年に成瀬監督の「女の中にいる他人」に出演した時のエピソード。本人曰く「台詞は少なかったが、実は僕が得た大きなチャンスだった」。主演は小林桂樹、新珠三千代。黒沢はバーのバーテンダー役。このバーで小林、新珠らがある事件について語り合った後、カウンターの中で皿を拭いていた黒沢が「僕の推理によりますと」と言う場面。本番の撮影前に行うテストでみんなの台詞の後、黒沢の番になり現場がストップした。成瀬監督が「黒沢君、『と』が違うよ」と指摘し、何度もテストは繰り返された。朝から夕方5時までテストが続き、キャメラは一度も回らず、「と」だけで一日が終わった。翌日の昼すぎ、控えめに言った台詞がOKとなった。
11日付は「ひき逃げ」。同年の成瀬作品で主演を射止め、新人賞にも輝く。バーテンダー役は主役ができるかの試験だったのだ。公開中の直営館には「映画界に黒豹現る」の看板が掲げられた。藤本真澄プロデューサーが仕掛人と黒沢は告白。筆者は中学生から梅田劇場へ通った。ロビーに「東宝映画友の会」の受付があり、東宝映画ファンの少年は友の会会員に。機関誌『東宝映画』が楽しみでした。

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