黒沢年雄「この道」が面白い

ベテラン俳優黒沢年雄(76)が東京新聞夕刊の一面連載『この道』に登場し、赤裸々に俳優人生を振り返っている。連載によると、横浜市生まれで、日本大学高校の先輩に坂本九、飯田久彦がおり、あこがれていたとか。映画会社のニューフェース募集の告知があるたびにオーディションに通い続けて、日活は最終面接まで残ったが落選。1964年(昭和39年)第4期東宝ニューフェースに合格した。
3月5日は『八方一郎』の見出し。「東宝入りして間もないころ、芸能部長から呼ばれた。ワクワクしながら部屋のドアを開けた。目の前に大きな垂れ幕が下がっていた。『命名 八方一郎』『へっ?』。あっけに取られた」との書き出し。「やかたいちろう」と読む。プロデューサー会議で決まったことが告げられる。黒沢は嫌で嫌でどうしようもなく、部屋を飛び出したという。最終的に本名の「黒沢年男」に落ち着く。やんちゃなイメージ通り。遅れてきた東宝青春映画ファンの筆者は、東宝「日本のいちばん長い日」(67)、東宝「野獣都市」(70)、東映「仁義なき戦い 頂上作戦」(74)がすぐ浮かぶ。青年将校、上昇志向の若者、暴力団の鉄砲玉役でいずれも黒沢のイメージと相通じる。78年には大ヒット曲「時には娼婦のように」もあり、昭和芸能界の語り部としてまだまだ活躍に期待したい。

タイトルとURLをコピーしました