久しぶりに歌舞伎を観劇。前回はちょうど2年前の歌舞伎座。市川中車(香川照之)と片岡愛之助による「らくだ」だった。今回は令和元年を締めくくる歌舞伎座十二月大歌舞伎で、同じ中車の「たぬき」(大佛次郎作、石川耕士演出)を見た。中車主演で泣き笑いの人情喜劇に仕上げて絶品だった。深川の火葬場から幕が開く。放蕩三昧の末に急死した柏屋金兵衛(中車)の葬式が営まれている。日も暮れ、遺族も引き上げたころ、金兵衛が息を吹き返す。肩身の狭い婿養子の暮らしに嫌気がさした金兵衛は、これ幸いにこのまま自分は死んだことにして、家へは帰らず妾の元へ。そこでも思うようにならず、考えた末に…。人間の心の表と裏を描いた、おかしさと切なさが巧みに混じりあう人情喜劇の名作。家つき女房おせきに市川門之助、妾お染に中村児太郎、その兄で太鼓持の蝶作に坂東彦三郎らが扮している。この日はBプロ。人間国宝坂東玉三郎の「保名」と「檀浦兜軍記 阿古屋」は中村梅枝が阿古屋を演じた。同じBプロ別の日は児太郎。Aプロは玉三郎がそれぞれ演じる。夜の部はグリム童話の白雪姫を翻訳した「本朝白雪姫譚話」など。白雪姫に玉三郎、鏡の精に梅枝、実母・野分の前を演じた児太郎がよかった。玉三郎指導の元、児太郎、梅枝の奮闘公演の趣となった。製作松竹。26日まで。
歌舞伎座十二月大歌舞伎
