小津監督から見た原節子

文春新書から『スターは楽し 映画で会いたい80人』(1200円+税)が出た。著者は、評論家で翻訳家の芝山幹郎氏。宣伝惹句は「ケイリー・グランドは14歳で退学処分」「大足がコンプレックスだったオードリー・ヘプバーン」「名優は人生もドラマティック!」とあり役者で選ぶ名画240本が紹介。
「名人」から「怪人」「巨人」「妖人」「野人」「才人」「奇人」まで8コーナーにスターがずらり。「麗人」には、原節子が登場。小津安二郎監督作品には「晩春」(49)から名作に主演している。小津監督は「原節子のよさは内面的な深さのある演技で脚本に提示された役柄の理解力と勘は驚くほど鋭敏です」(時事新報1951年9月14日の記事から)と絶賛。芝山氏は「東京物語」(53)のラストシーン、汽車の車内で義父からもらった亡き義母の形見の懐中時計を見つめる場面に注目し解説。『懐中時計の蓋をそっと開き、ふたたび閉じて、一度二度とまばたきをする場面。この場面の原節子は、みごとに抑制を働かせる』と書き、懐中時計をもらう場面にふれ『余韻は長く、三等車の硬い背もたれと女優の作り出す時間は果てしなく続いていくようだ』と結んでいる。もう1本は「紀子三部作」の「麦秋」(51)。いずれも松竹メディア事業部から4K復元版のブルーレイが発売中。