岡島興業㈱の思い出

さきごろ、大阪の近鉄沿線布施駅前にある「布施ラインシネマ」(7スクリーン。運営・岡島興業㈱)が2020年2月29日をもって閉館するとホームページ、映画会社と興行関係者には書面をもって通知した(本紙既報)。同館は97年末の開業。いくつかシネコンはあったが、大阪の独立系老舗興行会社がオープンしたと話題になった。岡島興業は戦前からの興業会社。戦後の映画全盛期には駅北側にラインシネマの前身・リオン座(東映系)をはじめ、南側の布施本町商店街に東大阪劇場(略称・東劇=東宝系)、昭栄座・昭栄シネマ(松竹系と大映・日活系)、さらに洋画ロードショーの朝日劇場、名画座の公楽座と6館を誇った。回転寿司発祥の地でもある。
筆者はそんな時、東劇の客席にいた。昭和46年秋、近畿大学附属高校1年生。見たのは、黒澤明監督の「七人の侍 海外版」「天国と地獄」の二本立て。映画の面白さと筋立てのち密さに興奮し、魅せられた。劇場を出る際には「アルバイトさせてください」と事務所の扉を開けていた。以来、近畿大学商経学部経済学科(現経済学部)を卒業するまで朝日劇場を中心に7年間アルバイトした。当時の岡島朝太郎社長には大変お世話になった。そして、各映画会社の関西支社へも出入りするようになる。青春の思い出がひとつ消える。