毎日新聞毎週火曜日の夕刊に木村大作監督・撮影監督の連載『私の記念碑』がおもしろい。23日の第4回は、東宝「八甲田山」(77)の思い出が中心。さきごろ、CS放送・日本映画専門チャンネルで4Kデジタル修復版を放送。好評で、木村氏が監修を担当していた。「天は我を見放した」の台詞(せりふ)が流行語に。橋本プロ・東宝映画・シナノ企画提携作品。製作・脚本を橋本忍、監督は森谷司郎。音楽芥川也寸志で、撮影はもちろん木村氏だ。製作期間が約3年半という当時空前の大作。
木村氏本人は森谷監督がサブのキャメラマンと考えているのではないかと感じ、監督本人を呼び出し聞いたところ、「バカヤロー。お前がメインだ」と怒鳴られた。雪中行軍演習中の陸軍遭難事件を描くため、森谷監督は木村キャメラマンにリアリティーの追求を要求、青森県の八甲田山での撮影に臨んだ。マイナス30度の世界は想像を絶し、ワンカット撮影するために3日間待機した。「映画人生で、これ以上しんどかったことはない」。映画は大ヒットし、苦労は報われ、主演の高倉健さんとは9本もコンビを組むことに。「健さんさんとは常に真剣勝負だった」と木村氏が言えば、健さんは「大作は俺が勝負を仕掛けた時は絶対に撮り逃さない」。「映画人冥利に尽きた」とは木村氏の本音だろう。
「八甲田山」のこと
