令和の時代となり、昭和は遠くなりにけり。さきごろ、今年の「サラリーマン川柳」が発表されたばかりだが、昭和を懐かしむ川柳もたくさん見られた。いつも立ち寄るJR有楽町駅前にある本屋の最新文庫コーナーに「キスカ撤退の指揮官」(将口泰浩著。光人社NF文庫)を見つけた。カバーには副題の「太平洋戦史に残る作戦を率いた提督木村昌福の生涯」と木村少将の顔写真が印刷されている。
1965年(昭和40年)6月、日本映画特別上映制度の実施に伴う第一回上映に選ばれ日比谷映画でロードショーの「太平洋奇跡の作戦 キスカ」(製作・配給東宝)は、木村少将を描いた戦争映画の傑作。製作は「ゴジラ」の田中友幸、脚本須崎勝彌、音楽團伊玖磨、監督丸山誠治、特技監督円谷英二。つづく7月は東宝系で森繫久彌主演「喜劇駅前金融」(監督佐伯幸三)と二本立てで公開。いずれも大ヒットした。筆者はこの併映作こそ東宝の屋台骨となり、東宝を支えたと思っている。一本は男性アクションの三船主演作や特撮大作などで気分をスカッとし、もう一本の森繫喜劇などで大笑いしたはず。「キスカ」は戦争末期の撤退作戦という地味な題材だったが、円谷特撮は白黒撮影でリアルに表現。5400人を一兵残らず撤収させた第一水雷戦隊の軽巡洋艦阿武隈たち12隻は本物に見えた。
「太平洋奇跡の作戦 キスカ」
