8月27日付の日本経済新聞朝刊コラム「春秋」に、小津安二郎監督の遺作「秋刀魚の味」(1962年・松竹大船)のことにふれている。秋の訪れを前にサンマの豊漁で、店先にも初物を見かけるようになった、というつながりで引用されている。冒頭「予告編を見た観客は生唾を飲み込んだかもしれない。キャッチコピーにいわく『渇望の味と香りを放つ感動の巨編』」と書いている。当時はチーフ助監督が予告編作りを担当。田代幸三助監督の手になる惹句と思われる。
続いて「ところが、この映画に食べ物はいくつか登場するが、サンマはどこにも出てこない」。さらに「娘を嫁がせる父親の悲哀を描き、しのびよる老いをどう受け止めるかを静かに問う。小津調の集大成というべきか。しみじみとして、ときにはほろ苦くもあるサンマの味わいを名匠は人生に重ねたのだろう。たしかにあの腸(はらわた)の苦みこそがサンマの味わいだ。もっとも、そういう味覚を云々(うんぬん)するのはだいたいが昭和世代である」と“秋刀魚の味”エピソードを結ぶ。そう書いているうちに松竹メディア事業部から「小津4K-巨匠が見つめた7つの家族-」アンコール上映が11月2日から15日まで角川シネマ有楽町で決まったとの連絡が入った。秋の楽しみが増えた。(本文参照)
小津4Kアンコール上映
