コラム|幻の高畑勲戦争映画

8月20日付の東京新聞夕刊1面トップ記事は「幻の高畑戦争映画」という大見出しが踊っている。さる4月に82歳で亡くなった高畑勲監督が企画書を書き上げ、映画化を熱望していた「戦争アニメ映画」があったとスクープ記事を掲載。「国境BORDER 1939」で、題名の上に「劇場用アニメーション映画」とある。原作は名古屋市在住だった児童文学作家の故しかたしん(本名四方晨)さん。第二次世界大戦前の中国大陸を舞台に、わが国(当時は大日本帝国)の侵略に抵抗するアジアにいる若者たちの連帯を描いたもの。東京新聞の林啓太記者はスタジオジブリから入手した映画の企画書を写真で紹介している。
企画書によると、主人公は京城(けいじょう=現在の韓国ソウル特別市)帝国大学予科生。失踪した親友を探すため、当時の満洲国秘密警察に追われながら、謎の美少女と一緒に蒙古(モンゴル)まで2万キロを駆け抜ける物語は壮大そのもの。企画書の完成は1989年4月中旬。2か月に天安門事件が起き、日本が批判的な情勢下では映画化後の興行として成り立たないと判断、断念した。高畑監督は前年の88年に「火垂るの墓」を発表、歴史に造詣が深いことから戦争ものを連作するつもりだったのではないか?今後も高畑監督に関する資料の発掘があることを期待したい。