気鋭の作家・編集者中川右介氏の新作が17日発売された。「松竹と東宝 興行をビジネスにした男たち」(光文社新書。900円+税)で、戦前・戦中・戦後を通して活躍した松竹創業者の白井松次郎翁と大谷竹次郎翁、東宝創業者の小林一三翁の物語。今回は演劇にスポットを当て、三人を中心に明治・大正・昭和を駆け抜けた巨人たちを膨大な資料を読み解き、書き下ろした392㌻に及ぶ渾身の力作だ。
内容は、発端・歌舞伎座開場、第一幕・京の芝居街の双子、第二幕・大阪の鉄道経営者、第三幕・宝塚と浅草の歌劇、第四幕・東京劇界の攻防、大詰・それぞれの戦後――と目次も芝居仕立てとなっている。松竹(最初は兄弟の名前から、まつたけと呼ばれた)の白井と大谷兄弟が京都から大阪、東京と劇場を手中にする様子がいきいきと描かれ痛快。映画部門は城戸四郎元会長に任せたとある。一方の一三翁は阪急電鉄(現阪急阪神ホールディングス)を創業し、宝塚歌劇団、東宝はじめ現在の東京電力にあたる東京電燈を任されるなど精力的な活動が目に見える。両社の経営陣には、松竹では竹次郎翁の孫、大谷信義代表取締役会長、城戸元会長の孫、迫本淳一代表取締役社長。東宝は一三翁の孫、松岡功名誉会長、曽孫の松岡宏泰常務取締役が活躍中。
光文社新書「松竹と東宝」
