加藤剛と栗原小巻

7月9日胆のうがんで亡くなった俳優の加藤剛さん。所属劇団の俳優座で先輩と後輩の間柄であり、舞台や映画での共演があった女優の栗原小巻さんが、7月11日の日本経済新聞朝刊「喪友記」に寄稿している。加藤さんの訃報は二男で同じ俳優座俳優の加藤頼さんから聞き「目の前が揺れるような目眩(めまい)を感じた」という。加藤さんとは俳優座養成所時代から先輩だった。その養成所の階段ですれちがった時に「彼は新劇の新しい星、ふりかえった笑顔は、ドラマの登場人物そのもの」と書き出している。
二人の初共演は、1967年のテレビドラマ「今年の恋」。木下恵介監督のプロデュース。「とても嬉(うれ)しかった」と振り返る。映画での共演も多い。栗原さんは「名匠による、どれも思い出深い作品」と書くが、まったく同意見。「戦争と人間」(山本薩夫)「忍ぶ川」(熊井啓)「忍ぶ糸」(出目昌伸)「子育てごっこ」(今井正)など。「戦争と人間」は夜を徹しての過酷な撮影だったが「剛さんの強い精神力にどれだけ励まされたか」と記し、「忍ぶ川」は「熊井監督が病をおして一年間かけて撮影した渾身の作品だった」と当時を振り返り書いている。

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