コラム|有馬稲子という女優

7月7日まで角川シネマ新宿で絶賛上映中の「小津4K巨匠が見つめた7つの家族」(配給松竹メディア事業部/KADOKAWA)が連日大入りを続けている。戦後の代表作から「晩春」「麥秋」「お茶漬の味」「東京物語」「早春」「東京暮色」(以上松竹大船)、「浮草」(大映東京)をすべて4Kデジタル修復版で上映。6月23日には香川京子さん、24日には有馬稲子さんが舞台あいさつ。往年の映画ファンが詰めかけた。
有馬さんはかつて、京都文化博物館で「宝塚歌劇出身女優特集」でのトークショーに出演。筆者が司会を務めた。そんな有馬さんが2010年4月日本経済新聞「私の履歴書」に登場し、その文章表現力に舌を巻いた。当時を振り返り、小津監督の演出術を披露している。「『行くの?』『行くわ』『やっぱり行くの?』、『く』が高い、『わ』が低いと何回もやり直させられました」「原節子さんが黙って振り向くシーンを十回も繰り返しテストされているのを見て、あのベテランでこうなのだから私などは、と顔がピクピクけいれんしたほどです」(「のど元過ぎれば有馬稲子」(日本経済新聞社刊より)。出演俳優で、これほど的確に小津監督を表現した女優はいない。